オーバルマシンの現状に問題。佐藤琢磨もオーバーテイクの数を嘆く (2ページ目)

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano  松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

「新エアロで戦うレースは楽しい」とパワーは強調していたが、それはトップから逃げ切った今年のインディ500と同様、オーバーテイクがほとんどないレースでトップを独走した者だけが感じることだろう。イエローの出るタイミングなどで後方集団に飲み込まれた場合、そこから這い上がるのは非常に難しい。

 佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、「オーバーテイクはゼロだったでしょう。ダウンフォースが足りなすぎる」と話した。燃費セーブが必要ない作戦にした者は、燃費セーブをしている者を楽々とパスできる。そういうオーバーテイクは頻繁に見られたが、それは本当にスリリングなクォリティの高いパスではない。

 新エアロキットはダウンフォースを減らすことでレースを面白くしてきた。しかし、それはロードコースとストリートコースに限ってのことだ。オーバルでのダウンフォースの"少なすぎ"はレースを単調にしている。アイオワのように急なバンクがつけられたコースでないと、オーバーテイクがなかなか起こらないためだ。

 ダウンフォースがありすぎるのも、マシン同士が接近し過ぎて危険だが、今のままでは燃費レースにならないとオーバーテイクがない。そして、燃費がポイントとなるとレースはエキサイティングでなくなる。インディカーはマシンレギュレーションをさらに改良し、このジレンマから脱却する必要があるだろう。

 救いは今シーズンの残り2戦が常設ロードコースであること。ポートランドとソノマでのレースでは、抜きつ抜かれつのバトルが繰り広げられることを期待したい。

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