室屋義秀に起きた初めての「まさか」。エアレース王者の悪夢は続く (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

 室屋は昨季最終戦以来となる優勝へ、確かな手応えを感じていた。

 続くラウンド・オブ・8では、フリーラブの分析結果をもとに、ライン取りをさらに微調整。レースデイではただひとり51秒台となる、51秒643を叩き出し、カービー・チャンブリスをねじ伏せた。飛んだ本人さえも「他のチームにとっては衝撃的だったはず」と自画自賛する、驚異的なタイムだった。

他を圧倒するタイムを叩き出していた室屋だったが・・・・・・他を圧倒するタイムを叩き出していた室屋だったが・・・・・・ 昨季終盤の、誰も寄せつけないような強さが戻ってきた。最近2戦で続いていた悪夢のような記憶を拭い去るチャンスが、ようやく訪れたかに思われた。

 しかしながら、室屋が笑顔でレースを振り返ることができるのも、ここまでだ。

 ラウンド・オブ・8を終え、ファイナル4への準備をしていた室屋に、ショッキングな判定が下された。

 ラウンド・オブ・8のフライト途中、エンジンのRPM(1分間あたりの回転数)が上限規定の2950回転を2秒以上続けて超えたため、オーバーRPMによるDQ(失格)となったのである。

「(自分の操縦にも原因がある)オーバーGとは違い、今回のはちょっと......、自分ではどうにもならない感じなので......。過去6シーズン、エアレースに参戦してきたが、こんなことは初めて。セッティングは今までとまったく変わっていないし、原因不明。フライトは落ち着いていただけに、正直、ショックは大きい」

 室屋はそう語り、悔しさをかみ殺すようにつぶやく。

「(ラウンド・オブ・8では)ひとりだけ(51秒台の)タイムを出しているし、(ファイナル4を)飛べば勝っただろうなって......」

 今回の第5戦、室屋は間違いなく強かった。フライトは安定していて危なげなく、そのうえ速かった。

 しかし、勝負は常に強いものが勝つとは限らない。どんな競技にも共通することだが、あらためて勝負の怖さや難しさを思い知らされる。今さらながら、昨季の室屋はよく4勝もできたものだと感心してしまう。

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