MotoGPイギリスGP中止は天災ではなく人災?
その原因を問う

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 選手たちが話すとおり、安全性に大きな懸念が生じてしまった今回の事態のような場合、レース中止自体はやむを得ない措置である。競技者の安全を優先したこの決定に対しては、恨み辛みのような悪感情を抱く人はおそらくいないだろう。

 ただし、この程度の雨にもかかわらず、レース開催を中止せざるを得なくなった路面の排水性については、劣悪な舗装状態に至った背景と原因について、しっかりとした検証と究明がなされるべきだろう。

 レースを開催できず、一戦をまるまるフイにしたという意味では、選手とチームは今回の事態の被害者だ。同時に、けっして安くはない観戦料金を支払って会場で5時間半も待たされた挙げ句、ただ雨に濡れただけで帰宅しなければならなかった大勢のファンもまた、被害者であることは間違いない。

 今回のレース中止を受けてシルバーストン・サーキットは、即座に来場者やファンに対して謝罪を表明し、チケット販売事業者等との連携を早々に開始するとSNSなどを通じて発表した。観戦券の払い戻しや何らかの損失補填などが行なわれる場合、その補償対象や賠償債務の主体等について、ひと悶着くらいはあるかもしれない。

 だが、金銭という実利的な賠償問題に発展すれば、事態の究明と今後に向けた対応対策がうやむやにならず、迅速に具体化されやすいという効果も期待できるだろう。その意味で、ひとりひとりのファンの声はたとえ小さくても、それが糾合することで今後の安全なレース開催に大きな影響を及ぼすことができる、ともいえる。泣き寝入りだけは、誰にも好結果をもたらさない。

 今回の第12戦中止により、チャンピオンシップポイントは第11戦終了時の状態で次のレースを迎えることになった。第13戦サンマリノGPは、2週間後の9月9日に決勝レースが行なわれる。

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