D・リカルドはなぜ勝てるレッドブルから勝てないルノーに移籍するのか (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 傍目から見れば、勝てるチームから勝てないチームへ移籍するのは馬鹿げたことのように見えるだろう。

 しかし、勝てるチームかどうかよりも、チームメイトに勝てるかどうかのほうが、レーシングドライバーにとっては重要なことだ。たとえ勝てるチームのシートを得ても、チームメイトのほうが速ければ自分は勝つことはできない。そしてなにより、レーシングドライバーとしての評価は地に落ちてしまう。

 そのリスクを背負ってでも勝てるチームにとどまるか、勝てないチームではあっても移籍し、その強力なライバルとの直接対決を避けるか。リカルドが決断を迫られていたのは、そういう困難な選択だった。

 一旦はレッドブルに契約延長の意向を伝えていたリカルドだったが、そんな背景もあり、最後の熟考で急転直下のルノー移籍を決めた。

 これで、2019年に向けたプールリーグは一気に動き出した。

 リカルド残留なら、カルロス・サインツ(ルノー)とピエール・ガスリー(トロロッソ)というレッドブル傘下の若手ふたりも、そのまま現チームにとどまることになったはずだ。だが、ルノーのシートを失ったサインツは個人スポンサーを持ち込むなど関係が深まっていたルイス・ガルシア・アバド(フェルナンド・アロンソのマネージャー)の後押しもあってマクラーレンとの話し合いを進め、時を同じくしてレッドブルは、サインツではなくガスリーをレッドブル・レーシングに昇格させることを決めた。

 これでサインツは、アロンソが引退することがわかっていたマクラーレンへの加入を選ぶことになった。

「ダニエルのルノー入りが発表されてからしばらくは、自分の行き先がわからない状態になっていた。だけど、僕もいくつかの選択肢は用意していたし、マクラーレンもそのなかのひとつだった。彼らとはもう1年以上にわたって関係を維持してきていたんだ。だからこそ、僕はとても冷静でいられた。

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