D・リカルドはなぜ勝てるレッドブルから勝てないルノーに移籍するのか (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 しかし、もっと大きかったのは、マックス・フェルスタッペンの存在だ。

 昨年後半から予選でフェルスタッペンの後塵を拝することが多くなったリカルドは、純粋な速さではフェルスタッペンに敵わないからこそ、決勝重視のセットアップに振るなどフェルスタッペンとは違ったアプローチでレース週末に臨んだ。

 その結果、今季前半はフェルスタッペンの1勝に対してリカルドは2勝を挙げて、ポイントランキングでは上回ってみせた。レッドブルだけが、2台のマシンで前後ウイングが大幅に異なっていることが多いのはそのためだ。しかしそれは、いかにも苦しい戦いだった。

 レッドブルはチームのためにチームオーダーは出しても、マシンや戦略の取扱いに関しては完全にイコールコンディションだ。だからこそ、純粋な速さでフェルスタッペンに勝てない現状は、リカルドには極めて厳しいものだった。2015年にレッドブルを去り、フェラーリへと新天地を求めたベッテルと同じように、リカルドはルノーに可能性を見出すことで、レッドブルでのフェルスタッペンとの直接対決を避けたのだ。

「現実的にいえば、来年ルノーでチャンピオンになるという可能性は極めて低いだろう。今年だって何勝かしたとはいえ、実力ではメルセデスAMGやフェラーリと優勝争いをすることはできなかったんだからね。

 でも、彼らの中長期的な計画を聞き、この2年間での進捗を知り、ファクトリーでの開発や設備投資を知れば非常に勇気づけられる。彼らは来年のメルボルンで勝とうと思っているなんて言わなかった。だけど、彼らの説明を聞けば、物事は急速に前に進んでいっているといえるだろうね」

 現状のレッドブルとルノーを比べれば、同じパワーユニットを積んでいるからこそ、車体だけで1秒近い差があることは明らかだ。いくら急速に進歩しているとはいっても、すぐにレッドブルのレベルに追いつけるようにはならない。

2 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る