原付で時速200キロ超。日本の「ものづくり技術」が世界記録に挑む (4ページ目)

  • text & photo by Sportiva

 SMCが挑もうとしているボンネビルの競技会は過酷な条件でも知られる。真夏の酷暑のなか、ボンネビルソルトフラッツと呼ばれる干上がった塩湖平原の直線コースでどれだけ速度を出せるかを競うシンプルな競技だが、そこには厳しいルールがある。

 まず、全長10マイル(約16km)の直線コースに設けられた複数の1マイル計測区間での平均速度が計測される。そして、1度目の走行で計測区間での世界最速記録を達成したマシンのみに新記録へのチャレンジ権が与えられる。つまり、1度だけ世界最速記録を超えても新記録認定とはならず、必ず2度目の走行で記録を再計測しなければならない。この2回にわたる計測の平均速度が既存の世界記録を超えていた場合にのみ、はじめて世界新記録として認定されるのだ。

 記録を達成しても賞金はなく、得られるのは名誉と自身のプライドだけ。それでも、モーターサイクルの歴史に名を残したい挑戦者はボンネビルのソルトレイクを夢見る。

 近兼率いるSMCのプロジェクトは2年がかりとなる。今年8月25日からのボンネビル・モーターサイクルスピードトライアルズは、マシンの準備が間に合った125ccクラスに挑戦し、200km/h域でのマシン挙動データを取る計画だ。そして、そのデータを元に1年間をかけて50ccのマシンを製作し、来年の同競技会で、いよいよ世界最速記録に挑むことになる。

「2ストロークと4ストロークの差や、エンジンタイプの違いがあるので非常に困難な目標ではありますが、もちろん50ccとしての絶対的な世界記録である233.3km/h超えが来年の目標です」

 仮に来年の新記録達成が果たせなくても、再来年以降もこの競技会に参加したいと意気込む近兼。果たして、日本のものづくり企業が培ってきた精密技術の素晴らしさを世界にアピールすることができるだろうか。

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