近藤真彦監督、モヤモヤを解消。
10年ぶりの美酒に酔いしれる

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

 近藤監督のこの思いは、ふたりのドライバーもしっかり理解していた。キャシディが「今年はスーパーフォーミュラで何としても結果を残したいんだ」と力強く語ると、山下も「今年は言い訳とか抜きにして(上位に)いかなきゃいけないんです」と自身にプレッシャーをかけていた。

 そう意気込んで臨んだ第4戦・富士。目を見張るパフォーマンスを披露したのがキャシディだった。

 キャシディは全日本F3でチャンピオンを獲った2015年から日本でレース活動を開始した23歳。スーパーフォーミュラやスーパーGTなど、近年世界的にレベルが高いと言われる日本で挑戦したいという思いが強く、日本語の勉強も日々欠かしていないと言う。今では日本語での挨拶はもちろん、簡単な会話も理解できるほどになっている。

 普段から明るいキャラクターのキャシディは、いつもフレンドリーに対応してくれる。だが、ポールポジションを獲得した第4戦ではナーバスな一面を見せ、筆者もいつになく気を遣って取材をした。

 そして決勝レースは、2番手に浮上した昨年チャンピオンの石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)との緊迫した接近戦となった。トップを走るキャシディは周回遅れのマシンに道をふさがれ、一瞬不安がよぎる。過去には大事な場面でミスを犯し、自滅することも多々あったからだ。

 だが今回、キャシディの集中力は一切乱れることがなかった。

 このキャシディの奮闘に、チームスタッフも見事に応える。35周目にキャシディがピットインすると、迅速な作業で彼をコースに送り出した。一方、追いかける石浦はピットストップでの逆転を狙い、ピットタイミングを遅らせる作戦に出る。キャシディがタイムの出にくいミディアムタイヤに交換したため、それまでにリードを広げて逆転する狙いだった。

 だが、キャシディも負けてはいなかった。石浦を上回るペースで周回し、40周目にピットインした石浦を逆転。気迫の走りを見せ、トップを奪い返すことに成功したのだ。

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