お客さんではなかったアロンソ、深夜の激走でトヨタがル・マン初制覇 (2ページ目)

  • 川喜田研●取材・文 text by Kawakita Ken photo by TOYOTA Gazoo Racing

深夜の快走でトップを奪い返した8号車深夜の快走でトップを奪い返した8号車 ちなみに、レース終盤、「ピットストップをうっかり忘れた」(可夢偉)という、にわかには信じられない理由で7号車が突如、スロー走行するシーンがあり、一瞬、ドキッとしたが、あれは、もしかすると「あえてチーム同士の戦いを避け、7号車を2位に固定する」ための"チームオーダー"だったのかもしれない......。

 2015~2017年にル・マン3連覇を成し遂げた王者・ポルシェが、トップカテゴリーのLMP1クラスから撤退し、「ライバル不在」の状況となった今年のル・マン24時間レース。唯一のワークスチームとしてLMP1ハイブリッドのマシンを走らせるトヨタに対しては、「勝って当然」という空気があったのは事実だろう。

 そんなトヨタの独走を防ぐべく、ル・マン主催者のACO(フランス・西部自動車クラブ)は、1ラップに使用できる燃料量の規制などでLMP1ノンハイブリッドのマシンを走らせるプライベートチームへの優遇措置を行なった。実際、ル・マン本番の1週間前に行なわれた「テストデイ」では、「ノンハイブリッド勢」が侮れない速さを見せていた。

 しかし、ふたを開けてみれば、トヨタの強さは完全に頭ひとつ飛び抜けていた。それは、中嶋一貴が自身2度目のポールポジションを獲得した予選や、レース本番でトヨタが見せた「ラップタイム上の速さ」だけではない。

 24時間のレース中、一度も大きなトラブルがなく、冷静に、淡々と自分たちのレースプログラムをこなし、「魔物が棲む」と呼ばれる伝統のレースのゴールに向けて、着実に一歩ずつ進んでゆく......。

 ル・マン24時間は、ライバルとの戦い以前に、何よりもまず「自分自身との戦い」なのだということを、これまで嫌というほど味わってきたトヨタだからこそ、彼らはこの1戦に向けて持てる力のすべてを注ぎ、かつてないほどの努力を重ねてきた。

「それでも、やり切ったとは思わない。『やり切った』の向こう側にまだ気づいていない『想定外』があることを、これまで何度も思い知らされてきましたからね......」と語っていた村田久武WECチーム代表。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る