今季インディカーは混戦なのに、なぜ佐藤琢磨はさっぱり勝てないのか (2ページ目)

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

 ロッシの後ろにつかえて燃費走法を続けるより、早めのピットで安定感の高いブラックタイヤに換え、3ストップ作戦で猛チャージしたほうが勝利のチャンスは大きいと考えたのだが、普通、このような作戦はもっと後方からスタートするチームが選ぶものだ。実際、後方スタートだった琢磨やトニー・カナーン(AJ・フォイト・レーシング)、中団スタートのジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)らもこの作戦にトライしている。

 3ストップ作戦のドライバーのなかで最も輝いていたのがハンター-レイだった。レース1での速さも目覚ましいものがあったが、レース2では前日以上にスピードがあった。
 
 面白いのは若手のロッシがポールスタートからオーソドックスに戦い、ベテランのハンター-レイが奇襲作戦的な3ストップで逆転優勝を狙ったところだ。チームメイト同士による勝負の行方が注目された。

 70周のレースの46周を終えたところで、ロッシはピットストップ。残り周回では燃費セーブが必要だ。一方のハンター-レイは52周でピットに入り、3セット目のブラックタイヤをつけて、ロッシに遅れること8秒でコースに戻った。1回多くピットストップをこなしてもこの僅差。燃費の心配が要らないうえに、ハンター-レイのマシンの仕上がりも非常にいいのは間違いなかった。

 ロッシのペースも悪くはなかったが、その差は急激に縮まり、残り10周を切ったところで、ハンター-レイはロッシの背後1秒につけた。

 チームメイトの先輩は自信に満ちた走りでロッシにプレッシャーをかけ続けた。すると65周目、ターン3へのハードブレーキングでロッシはタイヤをロックさせ、エスケープゾーンまでオーバーランしてしまう。ハンター-レイの気迫に押され、プッシュトゥパス(追い抜き時などに使う出力を上げるボタン)を少し長く押しすぎたのだ。少し前からブレーキがロック気味だったロッシは、トップの座を明け渡した。

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