佐藤琢磨もハマって追突ドカン。今年のインディ500は乱気流地獄に (5ページ目)

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

 フルタンクで走れる周回は30周程度だが、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)はフルコースコーションを利用し、残り40周でピットインして大逆転を狙った。しかし、そこまでの燃費セーブは無理と判明、フィニッシュすることに目標を切り替えて3位となった。

 アンドレッティ・オートスポートから出場の若手ステファン・ウィルソンと、ホンダのもうひとつのチーム、シュミット・ピーターソン・モータースポーツからエントリーしたルーキーのジャック・ハービーも燃費を抑えた走行で優勝を狙った。

 残り8周のリスタートで、パワーは4番手。前を行くのはいずれも燃費ギャンブル派だ。「この3台をゴールまでに必ず抜き去る!」と意気込んだが、オーバーテイクの最も大きなチャンスであるはずのリスタートで1台もパスできない。「このまま燃費走行組が逃げ切るのか?」という雰囲気が漂う。

 残り6周でパワーは3台のうちの1台をパス。その勢いで次のターゲットを狙うが、今年のマシンは2台以上が前を走る状況では、乱気流が大きくて簡単にパスができない。もう時間切れか。最速のマシンを作り上げ、完璧なレースを戦っても、パワーはインディ500で勝つことができないのか......と、大観衆も思い始めていた。

 だが残り4周。パワーがターン4を立ち上がると、トップのウィルソンがピットロードに向かい、ハービーも少し遅れて続いた。突然、目の前から2台が消え、パワーにインディ500勝利への扉が開かれた瞬間だった。

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