ホンダのエース山本尚貴、快進撃の裏に「ガスリーに完敗」の苦い経験 (3ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

「クルマの調子がよくて、レース展開にも恵まれているときは、何もしなくても勝っちゃうんですよね。でも、レースをやっていれば絶対にいいときばかりじゃないし、苦しい時期がくるのも当たり前。なので、その苦しいときにどれだけ目を背けないでがんばり続けられるかが、僕は大事だと思っています」

 この言葉を聞いて、筆者は2014年のことを思い出した。山本は前年に初めてスーパーフォーミュラの年間王者を獲得したものの、2014年は開幕前テストでトップから2秒遅れという散々な結果に始まり、シーズンに突入しても苦しいレースを強いられた。

 そのとき、彼が常々言っていたのが、「苦しいときこそ、クサらず、前を向いてがんばる」だった。

 昨年もガスリーにスポットライトが当たる一方、チームメイトで比較対象になりやすい山本は苦しい状況に立たされていた。だが、その現実を受け止め、あきらめずにコツコツと努力を重ねてきた結果が、今の「運」も味方してくれるほどの快進撃につながっているのかもしれない。

 チャンピオンシップをリードする現状について、山本はこう語る。

「2勝しているけど、まだレースはたくさん残っていますし、自分がリタイアしたらポイントランキングもすぐに逆転されてしまうので、絶対に気を抜いちゃいけないです。非常にいい流れなのは事実なので、自分のいいところと反省すべきところを見極めて残りも戦っていけたら、自分の目標(年間王者)に届くんじゃないかなと思います」

 これからのシーズン中盤は、トヨタエンジン勢が得意とするコースが続く。だが、「クサらずに前を向く」姿勢を貫き続ければ、2013年以来となる年間チャンピオン獲得の可能性はグッと広がるだろう。

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