新尾翼を投入→やっぱやめた。エアレース室屋義秀の惨敗を招いた迷い (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

 特に、およそ1年がかりで新設計されたエンジンカウルは、チーム・ファルケンにとって史上最大のプロジェクトの成果であり、その投入を終えた段階で、室屋は「これで今季を戦える」と語り、ホッとしたように今季の機体改良の完了を示唆していた。

 ところが、その後、新たに垂直尾翼が投入された。従来のものに比べ、サイズにして3分の2くらいまで小型化された垂直尾翼は、室屋の言葉を借りれば、「今までの改造のなかで、最も操縦への影響が大きい。コントロールが難しく、もうちょっと慣れが必要」という代物だった。

 実際、今回の第3戦を振り返っても、室屋自身が「奇跡的にうまくいった」と評した予選1本目を除けば、公式練習から予選まで室屋のフライトは乱れまくった。

 にもかかわらず、今回のレースを前に投入が"強行"されたのは、「乗りこなせるようになれば全体的に抵抗が減るし、タイム的にもよくなる。千葉戦だけを考えたら、もう少し遅らす手もあったと思うが、ここでやらないと、この先はセットアップやトレーニングの時間を取るのが難しい」と室屋。「千葉戦は相当集中力が必要な、コントロールが難しいレースになる」ことを覚悟のうえで、「今季はこれ(千葉戦)を含めて6戦あるので、今投入しておくほうがシーズン全体を見ればプラスになるはず」と判断したからだ。

 しかし、結果論を承知で言えば、その判断は裏目に出た。

 室屋は「改造したパーツのすべてがうまくいくわけではない。半分以上は使えずにボツになる」と、機体改良の実状を語る。だからこそ、今回のレースの予選と本選の間に新しい垂直尾翼をあきらめ、再び元へ戻す決断に至ったことについても、「想定内の出来事だった」とは言うが、やはり臨戦過程がチグハグだった印象は否めない。

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