新尾翼を投入→やっぱやめた。エアレース室屋義秀の惨敗を招いた迷い

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

 千葉・幕張海浜公園で行なわれたレッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ第3戦で、昨年の年間総合王者、室屋義秀はラウンド・オブ・14敗退に終わった。

 世界チャンピオンの凱旋レース。しかも、レッドブル・エアレース史上初となる母国レースでの3年連続優勝がかかった注目の一戦で喫した惨敗である。

千葉レース3連覇を期待した日本のファンも多かったが......千葉レース3連覇を期待した日本のファンも多かったが...... もちろん、地元開催ゆえのプレッシャーは少なからずあっただろう。それは室屋自身も認めている。だが、「こういう状況も含めて背負っていくのがプロ」と語る室屋は、重圧を敗因とすることをよしとしない。

 ならば、敗因はどこにあったのか。それを考えたとき、やはり引っかかるのは、今回のレースを前にして行なわれた「垂直尾翼の改良」である。

 室屋は年間総合2連覇を目指す今季、大掛かりな機体改造に着手した。第2戦からは新しいエンジンカウルとウイングチップを、今回の第3戦からは新しい垂直尾翼を投入している。

 なぜ開幕戦からではなかったのかといえば、それは単純にレーススケジュールによるところが大きい。昨年10月に昨季最終戦がアメリカ・インディアナポリスで行なわれた後、今季開幕戦が2月にUAE・アブダビで行なわれるまでの間、機体は船便で運ばれるため、手をかけられる時間がほとんどなかったからである。

 そのため、アブダビでの開幕戦が終わった後、4月の第2戦までのおよそ2カ月半の時間を利用して、今季に向けた本格的な"戦力補強"がなされたというわけだ。

 改良が行なわれたパーツのうち、エンジンカウルとウイングチップについては、上々の成果を収めていた。実際、投入初戦の第2戦では、危なげなくファイナル4へ進出している。

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