エアレース・室屋義秀が、顔を「イケメン」にして史上初の偉業達成へ (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 プレッシャーが大きい母国レースは、ひとつ勝つだけでも難しいと言われるなか、もしも室屋が次戦に勝利すれば、史上初の偉業達成となる。

 ただ、昨年と今年で違うのは、千葉戦に至るまでの成績だ。昨年は第2戦(アメリカ・サンディエゴ)で優勝し、勢いに乗って千葉での第3戦を迎えたのに対し、今年はここまで2戦未勝利。2戦ともにファイナル4へ進出しており、成績が安定しているとは言えるが、裏を返せば、勝ち切れないレースが続いているとも言える。

 それでも室屋は、「機体の性能的に言えば、昨年より楽なレースになるはず」と、現状を冷静に分析し、こう語る。

「勝ち切れないことのもどかしさはないし、今年はこういうペース(勝てなくても常に上位に入る)を目指しているので、ここまでの成績も悪くない。むしろ昨年は、本来なら優勝できないタイムだったのに(他のパイロットのミスで)優勝できた。それに比べて今年は、性能的に優勝が見えているから」

 昨季、アジア出身パイロットとして初の年間総合優勝を果たしたことで、室屋への注目度は一気に高まった。メディアへの露出もかつてないほど増加し、知名度は急上昇した。千葉での凱旋レース期間中は、常に多くの視線を集め続けることになるのだろう。

 すでに昨年の開催時でさえ、室屋がホテルとレースエアポートとの間を行き来するのが容易ではなくなっていたが、今年はさらなる"ヨシ・マニア"の熱狂が待ち受ける。室屋が受けるプレッシャーは決して小さくはないはずだ。

 しかし、室屋はまるで他人事のように、「どうなるんだろう。きっと、スゴいことになるんでしょうね」と言って笑い、周囲の変化をいい意味で"無視"している。

 パイロットとしてやるべきことに集中する。機体の改造に成功した今、室屋の頭にあるのは、そのことだけだ。

「千葉でのレースは何かと忙しくなるが、最近はフライト以外のこともうまくコントロールできている。そこは昨年の大きな成果だと思う」

 千葉・幕張海浜公園での今季第3戦が行なわれるのは、5月26、27日。偉業達成の瞬間は、もう間もなくである。

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