スーパーGT「可夢偉の代役」が驚異の走り。
22歳の新星は何者だ?

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

 このように今シーズン、坪井はつちやエンジニアリングからGT300クラスにレギュラー参戦している。ただ、第2戦のみ前述の理由で39号車にレンタル移籍する形となり、GT500クラスを経験することになったのだ。

 坪井はシーズンオフ、チーム土屋の86マザーシャシーのテストを行ないながら、同時にGT500マシンのテストにも参加した。ただ、基本的にはレギュラーであるコバライネンと小林が乗る機会が多く、空いた時間に少しずつ乗る予定だった。

 しかも、その数少ない機会だった3月末、富士スピードウェイでの公式テストで、不運にもエンジントラブルが発生してテストは中断。坪井は走り込みがほとんどできないまま、GT500クラスのデビュー戦を迎えることになった。

「走り込めていないのが不安要素です」

 レース前にそう語っていた坪井に、さらなる不運が襲いかかる。予選日の朝に予定されていた1時間45分の公式練習セッションが濃霧による視界不良のため、突如中止となったのだ。

 天候が回復したお昼過ぎに30分の走行時間が与えられたものの、その後の予選でタイムアタックを担当するコバライネンの走行時間を優先するため、坪井が走れたのはわずか3周のみ。まさに「確認走行をする程度」だった。

「基本的にレギュラーが乗ることがメインなので、空いた枠にちょっと乗った程度。富士の公式テストでもエンジントラブルが出てまったく乗れていないですし、昨日も3周しか乗れなかった。何もわからない状況で、ただ(GT500車両に)乗っただけというレベルです」

 決勝を想定した連続走行(ロングラン)もできず、新品タイヤを履いてタイムアタックのシミュレーションも未経験――。そんな状況で決勝レースを迎えた坪井に、いきなり重要な場面で出番が回ってくる。5番手からスタートしたコバライネンが渾身の追い上げを見せてトップに浮上し、首位をキープしたまま坪井にバトンタッチすることになったのだ。

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