山本尚貴、2年ぶり優勝に涙。「天国のおばあちゃんが勝たせてくれた」 (3ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

 迎えた決勝も、決して楽なレースではなかった。ほぼすべての周回でトップをキープしたものの、序盤は塚越広大(REAL RACING)が背後まで迫り、終盤も関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が猛烈に追い上げてきた。だが、山本は「絶対に勝たなきゃならない」と意地を見せ、最後までトップの座を死守したのである。

 レース後の表彰式。山本は何度も空を見上げ、優勝者を讃える国歌演奏の場面では涙があふれた。そのとき、山本はこんなことを考えていたという。

「勝てない時期が長かったですし、昨年は特に苦しい思いをしてきました。勝ち方としてはギリギリでしたけど、ここでひとつ勝てたということで、込み上げてくるものがありましたね。

 今回の勝利はもちろん、チームとホンダのがんばりが支えとなっていたのは確かです。ただ、個人的な思いとしては......最後におばあちゃんが僕に勝利をプレゼントしてくれたのかな、と思います」

 優勝トロフィーを受け取ると、山本は高々と天に掲げた。

"おばあちゃん、勝ったよ!"

 心のなかで、そう叫んでいるようだった。

「(この勝利を)報告したい人はたくさんいるけど、今回の勝利は一番におばあちゃんに報告したいなと思いました。早くお墓に優勝した写真を持っていって、『勝ったよ!』と報告してあげたいですね。これからも天国で見守ってくれていると思うので、今度は僕がおばあちゃんにプレゼントできるようにがんばります」

 そのプレゼントの中身こそ明言しなかったが、それは間違いなく「2018シーズンの年間チャンピオンを獲得すること」だろう。大好きだった祖母に最大の恩返しをすべく、山本は最高のスタートを切った。

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