マルケス12連勝、ホンダ15連勝。
アメリカ「無敵伝説」はまだ続く

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

「いつもなら誰かが終盤にアタックするまで様子を見ながら待っているけど、正直なことをいえば、アルゼンチンの一件があったので今日は戦略を変えた」と、マルケスはこの日のレース展開を振り返った。

 アルゼンチンの一件とは、上記で触れた決勝中の3度のペナルティを指す。最初から一気に引き離してしまえば、他の選手とのバトルで絡むこともなく、したがって罰則処分を受ける可能性もない、というわけだ。

 前回のレースでは、自らの過失が原因でバレンティーノ・ロッシ(モビスター・ヤマハ MotoGP)を転倒させてしまう事態も発生し、そのために今回のレースウィークでは多くのロッシファンからブーイングも浴びた。毎年勝ち続けてきたコースで今年も当然のように優勝を期待されているという事実と、前戦のアクシデントがあいまって、今週末のマルケスにはかなりの精神的負荷がかかっていたことは容易に想像できる。レースを終えたマルケスは、そのプレッシャーを認めたうえで、「それがさらに大きなモチベーションになった」と明かした。

「モチベーションは、コース上で答えを出したい、ということ。だから、今日のレースでは大差を開いた。今回のようなプレッシャーがあると、気持ちよく走れる。正反対になってしまう場合もあるけれども、今週はいい方向に運んだ」

 スポーツの世界では「デタミネーション(絶対に結果を成し遂げようという強固な意志)」という言葉がよく使われる。今回のマルケスは、まさにデタミネーションの塊と化していた、といえるだろう。6年連続で圧勝を飾った後のウィニングランでは、昨年5月に交通事故で急逝したニッキー・ヘイデンの旗を掲げてコースを一周した。

「レース前に、チームとホンダに『ニッキーのコースで勝ちたい』と話していたんだ。彼はアメリカとホンダにとってスペシャルなライダーだし、僕自身も彼とはいい関係だった。メモリアルラップをできてよかった」

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