J・バトン新連載。いきなり「ホンダ1・2位」を演じた驚異の適応力 (3ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

 だが、バトンは冷静さを失っていなかった。上位進出のために、チームはタイヤ無交換作戦を敢行。バトンはスーパーGTでのレース経験が少ないながら、しっかりとタイヤマネージメントを行ない、安定したペースで順位をキープした。そして37週目にピットインし、山本に交代。この作戦によってピット作業を大幅に短縮でき、2番手に浮上することに成功した。

 レース終盤はトップを走るKEIHIN NSX-GT(ナンバー17)を山本が追走し、逆転することはできなかったものの、見事に2位でフィニッシュ。スーパーGTフル参戦のデビューレースで表彰台に立ち、バトンは満面の笑顔で応援してくれたファンに応えていた。

「(新しいスタートシステムについて)僕はいいスタートを切れたんだけど、先頭のマシンが加速しなくて......。他のマシンが接触を回避しようとして混乱してしまった。昨年の鈴鹿にスポット参戦したときはレース中盤から乗ったので各車バラけている状態での混走だったけど、今回はスタート直後からGT300の集団に飛び込んでいく感じだった。大変だったけど、すごくいい経験になったよ」

 シーズン前の非常に短い期間での準備に加え、この開幕戦の週末で起きたトラブルに対しても、バトンは「いい経験」と捉えていた。間違いなく第2戦の富士スピードウェイでは、この経験を力に変えてさらに成長した走りを披露してくれそうだ。

 そして今回、バトンの言動でもっとも印象に残ったのが、パートナーである山本尚貴のがんばりを讃えていたことだ。

「チームがすばらしい戦略を用意してくれたので、タイヤ無交換作戦で20秒くらいタイムを稼ぐことができたよ。そこから後半のナオキ(山本)は、交換していないタイヤで最後まですばらしい走りをした。間違いなく彼は、今回の『ドライバー・オブ・ザ・デー(※)』だね」

※ドライバー・オブ・ザ・デー=そのレースでもっとも活躍したドライバーに与えられるもの。

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