J・バトン新連載。いきなり「ホンダ1・2位」を演じた驚異の適応力 (2ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

 だがこのとき、バトンの能力の高さが垣間見えた。元F1王者はわずかな時間のなかでさまざまなことを吸収し、パートナーの山本とのタイム差を一気に縮めていったのだ。

 開幕戦の前日。チームクニミツのトランスポーターを訪れると、2ヵ月前のテストのときとは見違えるほどに、バトンは自信に満ちた表情をしていた。

「最初のテストのころと比べると、自信を深めることができた。特にGT300クラスとの混走をしっかり練習できたのは大きかったね。不安材料はほとんどない。簡単なレースにならないとは思うけど、チームクニミツのみんながすばらしい仕事をしているので、いい形で開幕戦を迎えられそうだ」

 しかし、開幕直後に予想外の事態が起こってしまう。予選前の公式練習でミッション系トラブルが発生し、まともに走ることができないまま予選を迎えることになったのだ。

 チームは総力を挙げてマシンを修復し、Q1では山本が2番手タイムをマーク。見事にQ2へと進出し、バトンにステアリングをつないだ。ところが、Q1終了直後に突然雨が降り出し、路面はたちまちウェットコンディションに......。バトンはシーズン前テストでウェットタイヤでの走行も経験していたが、今回は事前に走り込めていない状態での出番となり、まさに"ぶっつけ本番"でのタイムアタックとなった。

「いくら元F1王者とはいえ、この条件で好タイムを出すのは難しいだろう」。誰もがそう思った。しかし、一発の勝負どころで能力を発揮するのが、バトンのすごいところだ。難しいウェットコンディションのなか、ミスのないアタックを決めて5番手タイムをマーク。優勝も狙えるポジションを手にした。

 そして迎えた決勝日。5番グリッドからスタートする100号車は、バトンがスタートドライバーを担当することになった。今年からルールが一部変更となったスタートシステムの影響で、1周目は予想以上の大混乱となる。バトンは8番手まで後退し、慣れない混走のなかで隙を突かれて11周目には9番手にポジションダウンしてしまった。

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