「日産の星」がトップフォーミュラに参戦。千代勝正が速さを証明する (2ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 萩庭桂太●撮影 photo by Haginiwa Keita

 そして迎えたGT500のデビュー戦、岡山国際サーキット。千代はこれまで培ってきた経験を存分に活かす走りを見せた。予選Q1で当時のコースレコードを更新すると、決勝でも相方の本山哲から4番手でバトンを受け取るやいなや3番手に順位を上げ、さらに2番手を走る平川亮を猛追。勢いあまって何度かコースからはみ出すシーンもあったが、それでも千代はアクセルを緩めることなく、平川に食らいついていった。

 わずかな隙さえあれば躊躇(ちゅうちょ)せずに並びかけ、毎ラップにわたって手に汗握るバトルを展開する。気がつくと、サーキットに集まった観衆のほとんどが千代の走りに釘付けとなっていた。最終的には逆転叶わず3位でフィニッシュ。しかし、取材に訪れていた報道陣は優勝した松田次生/ロニー・クインタレッリ組ではなく、まず先に千代のコメントをもらおうと彼のもとに集まっていた。

「F3のときも、スーパーGTにステップアップしたときも、自分のドライビングには自信があったので、『自分の速さを証明したい』とずっと思っていました。でも、周りの評価と自分が思う(自分自身の)ポテンシャルという部分に差があって、それが歯がゆかったです。

 モータースポーツはクルマというモノを使う競技なので、外から(結果だけを)観ている人にはわかりづらいところがあると思います。ただ、GT500というのは言い訳のできないプロのカテゴリー。自分がどんなに速いと思っていても、周りが認めてくれないと評価されない世界です。だから、やっぱり自分もタイムで証明しなきゃいけないという思いで(2016年の開幕戦は)走りました。2016年の開幕戦は、『これまでの経験が無駄じゃなかったんだ』と思えたレースでしたね」

 続く第2戦の富士スピードウェイでも、千代は予選Q1でコースレコードを塗り替える速さでトップタイムをマーク。決勝はレース展開に恵まれず表彰台を逃したが、その走りを見た関係者は、「千代の初優勝は時間の問題」と誰もが思っていた。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る