F1ホンダは事実上「第5期」に。猛獣と呼ばれるトップが再建に自信 (5ページ目)

  • 米家峰起●取材・文・撮影 text & photo by Yoneya Mineoki

「まずは落ち着いてスタートを切ること。去年のように、トラックテストもロクにできずに車体側のテストができないということがないように。特にドライバーも新人ですから、(開幕前テストで)たくさん走るということがチームとしての総合力を上げることになると思います。

 当然パワーを上げることもやっていきますけど、モノには順番というものがあります。これまでと違うシャシーに積むだけでも初めて経験することがあるわけですから、まずはそこでトラブルが起きないよう注意深く進めます。そこから先の技術は、まだ言えません」

 昨年型ではTC(ターボチャージャー)のタービンとMGU-H(※)をつなぐシャフトに負荷がかかり、そのベアリング破損という問題を抱えた。これは昨シーズン中から見直しを進め、「ちょっと見渡せばホンダは結構大きな会社で、よく見ればいろんな人がいて、ジェット機を作っている人までいる。HRD Sakuraのこぢんまりしたところでやるのではなく、『オールホンダ』のパワーをどう使って競争力を上げていくか。それを去年中から始めています」と、さまざまな技術を意欲的に採り入れていることも示唆している。

※MGU-H=Motor Generator Unit-Heatの略。排気ガスから熱エネルギーを回生する装置。

 まずは昨年型の延長線上で、"大コケ"をしないパワーユニットでシーズンの開幕を切る。驚くようなパフォーマンスは期待できないかもしれないが、年間3基という規定を守り、残り2回のアップデートのタイミングでパフォーマンスを向上させていく。浅木の言葉を信じるなら、猛獣たちがこれまでになかったような力を、そこで発揮してくれるはずだ。

 トロロッソは初のワークス体制でパワーユニットメーカーと直接やりとりをしながらマシンを開発していく自由度の高さを歓迎し、その利を最大限に生かそうとしている。マネージメント面でも、マクラーレンのような政治的な要素のないシンプルな体制であり、レースに専念できる。

 ホンダは"第5期"と呼んでも差し支えないような新章へと再出発を切ろうとしている。その変革は、すぐに我々の目に見えてはこないだろう。しかし、着実にホンダはホンダらしく生まれ変わっていく。山本と浅木というふたりの猛獣使いが、それを果たしてくれるはずだ。

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