F1ホンダは事実上「第5期」に。猛獣と呼ばれるトップが再建に自信 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文・撮影 text & photo by Yoneya Mineoki

 ホンダ本社のマネージメントを取り仕切る山本雅史モータースポーツ部長も、浅木と同じく豪腕で知られる人物だ。カートで全日本選手権まで争っていた生粋のレース好きで、モータースポーツ部長に就く前は研究所に在籍していた山本は、浅木の強みもよく知っている。

「研究所にいたときから、浅木とは『ホンダのモータースポーツはこのままじゃヤバいよね』という話をしていたんです。そう言っていたら、僕がモータースポーツ部長になり、そして浅木がこのポジションになって......」

 そう言って苦笑いする山本だが、2016年4月にその職に就いてから組織体制面の見直しに腐心してきた。F1に限らずモータースポーツ活動全体において、山本が思い描くホンダらしいホンダにするために、変えるべきところは変え、見直すべきところは見直した。その成果が佐藤琢磨のインディアナポリス500優勝であり、スーパーフォーミュラやスーパーGTのパフォーマンスの向上でもあり、各カテゴリーで徐々に結果が出始めている。

 そしてついに、F1にも大ナタが入ることになった。よりホンダらしく、自由闊達で、スピーディーな開発のためだ。

「マクラーレンにいろいろと非難されたように、F1で戦うにはスピード感も必要だし、それはその通りだと真摯に受け止めていました。レースというのは、今日決めたら今日やらなきゃいけないことがたくさんあるし、組織に階層を作っていたらそれだけで(ひとつ決めるのに)3日~4日かかって、それでもう勝負は終わっているんです」

 それを変えるために、浅木をトップに据え、スピーディーに判断して開発を進めていく。

「勝つためにはなんでもやるけど、ダメなものはやめるという割り切りも必要なんです。足し算だけでなく、引き算もできなければいけない。人の数には限りがあるわけで、足し算ばかりではオーバーフローするだけですから。浅木は先を描いて動くということができる数少ない人材のひとりです。ポイントをちゃんと見つけて、針に糸を通すようなことを考えて動ける人なんです」

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