佐藤琢磨、テストで最速。新チームは「何かすごい秘密」を知っている (2ページ目)

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

 ところが、マイケルの思惑は外れた。シボレーからさほどいい条件は提示されなかったようで、結局はホンダと再契約。あわてて琢磨に残留を迫ったが、時すでに遅し、だった。

 今から思えば、結果的にマイケルの逡巡は琢磨にとって大きなチャンスとなった。インディ500を一緒に戦い、勝利を手にしたアンドレッティに残留する話は決して悪くはないと琢磨は考えていたが、もともとレイホール移籍にもより大きな魅力を感じていたからだ。

 明らかに不利な1台体制ながら、2015年に2勝、2016年に1勝、2017年は2勝しているレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング。それを可能としたのはドライバーのグレアム・レイホールの才能だけでなく、トップレベルにあるチームのエンジニアリング能力が大きい。

 金曜日の最初のプラクティスで遅くても、土曜日の予選や、日曜日の決勝までにセッティングを修正して優勝を争えるだけの力を発揮する姿を彼らは何度も見せてきた。琢磨はそうしたパフォーマンスを外から見て、高く評価していたのだ。

 レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングは、ホンダ勢が苦戦し続けたショートオーバルやロードコースでも、優位に立つシボレーのエアロを使うライバルたちとほぼ互角の戦いをしていた。ほぼ同一のシャシーで戦うインディカーシリーズでは、エアロ以外ではサスペンション・セッティングの重要性が高い。特に、ダンパー(=ショック・アブソーバー)の性能、ノウハウが大きな鍵を握る。

 レイホールのチームは、ライバルたちが持っていない何かをその分野で手に入れているということだ。琢磨はコース上でレイホールの背後を走ったときや、区間タイムなどのデータから、「彼らが大きなメカニカルグリップを得ているのは間違いない」と分析していた。

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