2018.01.29

父の病、横転クラッシュも
「町工場のGT王者」チーム土屋の心は折れず

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

 毎日マシンと向き合い、各パーツの細かな変化も見逃さず、状況に応じて最高の状態に仕上げていく――。その高い意識と妥協のない作業が、昨年の彼らが見せた「速さの秘訣」だった。そして図らずも、2015年の参戦時から積み上げ続けてきたマシンがクラッシュによってバラバラになったことで、初めてその重要さを再確認することになったのだ。

 また、チームにとって収穫は、マシンのことだけではないという。エースドライバーへと成長した松井も、あのクラッシュで気づけたことが多かったと語る。

「鈴鹿のときは自分自身をコントロールできていなくて、多少無理をしていたというのが反省点でした。そこからドライビングスタイルを特に変えたわけではないんですが、改めて僕のいいところと悪いところを見直しました。できること、できないことは人それぞれ。僕にとって非常にいい経験でした」

 土屋武士は2017年をこう振り返る。

「結果的にお金はかかりましたが、すごくいい(成長の)キッカケになったし、2016年とは比べ物にならないくらい中身の濃い1年でした。2017年の僕たちのテーマは『昨日の自分に負けない』でした。これを最後までやり切れたことが、これからの僕たちにとってものすごい財産になると思います」

 土屋武士の2017シーズンは、父・春雄氏の入院という大事件から始まった。しかし皮肉なことに、その父がいないからこそ、マシンと向き合えた。

「レースで勝てるマシン」「周りから速いと恐れられるマシン」を組み上げるのに、特別なことは何ひとつない。とにかく地道に、細かな変化も見逃さず、丁寧にマシンと向き合っていくだけ......。これこそが「最速への一番の近道」なのだということを、改めて感じさせてくれたシーズンだった。

 2018シーズン、VivaC team TSUCHIYAのドライバー体制は現時点で未定だが、引き続き86 MCでGT300クラスに参戦予定だという。今年は我々にどんなドラマを魅せてくれるのか、「打倒ワークス」を掲げる町工場チームの物語は今後も続いていく。

◆元F1王者ジェンソン・バトンがスーパーGT参戦を決めたのはなぜか?>>>

◆日本人F1ドライバー候補は2人。鈴鹿でトロロッソをドライブなるか>>>

■モータースポーツ 記事一覧>>

関連記事