父の病、横転クラッシュも「町工場のGT王者」チーム土屋の心は折れず (2ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

 だが、土屋武士の苦労が第3戦・オートポリスでようやく報われる。ナンバー61のSUBARU BRZ R&D SPORTとの激闘を制し、0.091秒差で優勝することができたのだ。レース後、土屋武士は「日ごろから知恵を振り絞っていたからこそ掴んだ勝利だった」と語る。

「以前から抱えていた燃料ポンプのトラブルを、本当に頭を悩ませながら対策しました。オートポリスのときも決勝中に(トラブルが)出たので、燃料を少し多めに入れてみたり、いろんな対策をしたおかげでギリギリ勝てたという感じです。

 もしその対策のうち、ひとつでもやっていなかったら勝てていなかった。神様が『(普段から)ちゃんとやっておかなきゃダメでしょ』というのを教えてくれたレースでしたね」

 この勝利を機に、チームは勢いを加速させた。順調にポイントを重ねてランキングトップで迎えた第6戦・鈴鹿――。82kgの重いウェイトハンデを背負い絶対的不利と予想された予選で、山下健太がコースレコードを大幅に塗り替える1分57秒543を叩き出す。この圧倒的な速さには周囲も驚き、チームのポテンシャルの高さを賞賛する声も日に日に大きくなっていった。

「今年もチャンピオンは25号車だ」

 そんな雰囲気が漂い始めていた矢先、決勝でまさかの事件が起きる。

 終盤までトップ争いを繰り広げたチーム土屋は、2位でフィニッシュが確実と思われていた。ところが残り4周で大クラッシュを喫し、マシンは激しく横転してしまう。ドライブしていた松井孝允(たかみつ)にケガはなかったものの、マシンは大破してしまった。

 次戦は、海外でのレースとなる第7戦・タイ――。マシンの輸送日程を考えると、修復に費やせる時間はわずかしか残されてない。土屋武士は少しでも修復時間を稼ぐため、通常なら船で行なう輸送を高価な空輸に変更することを決断し、なんとか第7戦・タイの出走に間に合わせることができた。

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