勝者も敗者も笑顔。マルケスとドヴィの劇的なシーズン、最高の終幕 (3ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 レースはヨハン・ザルコ(モンスター・ヤマハ Tech3)がトップを走行し、マルケスとチームメイトのダニ・ペドロサがその背後につけた。そして、ドヴィツィオーゾの少し前でチームメイトのホルヘ・ロレンソが前方3名に懸命に追いすがる、という緊迫した状況が続いた。

 マルケスはこの順位のままゴールしても、チャンピオンを確保できる。だが、ドヴィツィオーゾは優勝しなければ可能性すら作れない。ドヴィツィオーゾを前に出すように何度も指示するチームからのサインを無視したかのようにも見えるロレンソの動きは、レースペースで前3名にコンマ数秒劣る自分たちがチャンスを切り開くために、ドヴィツィオーゾよりも少しだけ速く走れている自分が彼を引っ張ってエネルギーを温存させながら前に食らいついていこう、という判断によるものだった。ペドロサとロレンソの差は着実に縮まっていった。

 マルケスも勝負に出た。

 22周目の最終コーナーでザルコを抜いて、ついにトップに立った。優勝でチャンピオンを獲得できれば、最高の形でフィナーレを飾ることができる。

 だが、メインストレートを先頭で通過したマルケスは、1コーナー進入でミスを犯し、フロントを派手に切れ込ませた。転倒寸前の状態から左ひじを路面に接地させながらマシンを引き起こして回避する奇跡のようなリカバーを見せたものの、そこからコース外へオーバーラン。コース上に復帰したときには、ドヴィツィオーゾから3.595秒背後の5番手へ順位を大幅に落としていた。

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