4度目の世界王者ハミルトンが
心技体を極めた「ヴィーガン生活」とは

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 この世には「心技体」という言葉がある。頂点を極める者は、そのすべてが一流であるという文脈でよく使われる。

 第18戦・メキシコGPで2017年ドライバーズワールドチャンピオンに輝いた今のルイス・ハミルトン(メルセデスMG)は、ついにその境地に達しつつある。そんなふうに感じさせた。

4度目のF1ワールドチャンピオンに輝いたルイス・ハミルトン4度目のF1ワールドチャンピオンに輝いたルイス・ハミルトン 心技体の「心」は、まさにメキシコGPで試されることとなった。

 スタート直後にセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)に接触され、ハミルトンは右リアタイヤにパンクを負って最後尾まで落ちた。この時点でトップからは60秒遅れ。さらにディフューザーの右側が半分近くも破損し、空力性能は大幅に失われていた。

 それでも、ハミルトンはあきらめなかった。彼が脳裏に浮かべていたのは、幼少期の苦い思い出と、黒人社会への差別と戦う強さを描いたマヤ・アンジェロウ(※)の有名な詩だった。

※マヤ・アンジェロウ=2014年に86歳で他界したアメリカの活動家、詩人、歌手。

「"Still I Rise"――とにかくあきらめないこと。レース中ずっと、僕はその言葉を自分自身に言い聞かせるように考えていたんだ。あきらめないために、子どものころに父が僕をボクシングのリングに立たせたときのことを思い出していた。僕は殴られて鼻血を出し、二度とリングに上がりたくないと思った。

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