エアレース王者・室屋義秀、今季は優勝連発も「来年はイチロー流で」 (5ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by red bull

 昨季、全7戦(1戦は悪天候で中止)で3勝、2位が3回と圧倒的な強さで年間王者に就いたマティアス・ドルダラーにしても、今季は1勝もできず、チャンピオンシップポイントランキングで7位に終わっている。

 パイロットのトレーニングでも、機体の改良でも、このくらいでいいだろうと妥協してしまえば、置いていかれるのはあっという間だ。

 だからこそ、室屋は自戒も込めて語る。

「世界チャンピオンにはなれたが、これから先も自分の目標が『操縦技術世界一』であることは変わらない。まだポールの域までは達していないし、操縦技術はまだまだ追い続けていきたい。2連覇もそれを極めていくなかで手にできるんだと思います」

 有言実行の悲願達成にも、室屋はまったく満足する様子を見せない。見ている側からすれば、もっと喜んでもいいのではないかと思ってしまうほどに、レース直後にひととき歓喜に浸って以後は、カメラを向けられてもどこか淡々と黄金のトロフィーを掲げている。

 しかし、言い方を変えれば、もしも室屋が最後の最後でタイトルを逃していたとしても、それほど落ち込むことはなかったに違いない。なぜなら、優勝できたかどうかの結果とは無関係に、正確に自分の現在地を測ることができているからである。

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