超絶レベルの快挙。室屋義秀が「エアレース年間王者」に至る成長曲線 (6ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by red bull

 年間総合優勝がかかった今季最終戦とあって、インディアナポリスには(千葉でのレースを除けば)いつもの何倍もの日本メディアが集まっていた。

 周囲の喧騒はできるだけ排除し、自分の気持ちをコントロールしていく。これまで室屋はそうやってレースに集中してきたのだが、これだけいつもと異なる環境に身を置かれてしまうと、「そうしたわずかなリズムの崩れが、結果としてフライトをガタガタにしてしまうんだと感じました」。

 土曜日の予選は、エンジンの不調があったにしても、2本のフライトでともにペナルティを犯す散々な出来に終わった。なるほど、これでは室屋から余裕が失われていたとしても不思議はない。確かに機体のセッティングがうまくいかなかったのも一因ではあるだろう。

 だとすると、今度はもうひとつ別の疑問、すなわち、それほどまでに落ち込んだ状態から、室屋はいかにして本選まで立ち直ったのか、にぶち当たる。

 室屋は苦しかった2日間を振り返り、こう語る。

「昨年優勝したマティアス(・ドルダラー)から当時の経験を話してもらったり、メンタルトレーナーからアドバイスをもらったりして、今までやってきたことで問題ないんだ、と。予選を終えた日の夜に、ようやく持ち直したという感じでした」

 しかし、室屋がいつもの室屋に戻れたのには、やはり「落ち着き」や「余裕」があったからだろう。目の前にちらつくタイトルを絶対に逃すわけにはいかない。そんな思いで力みかえっていたら、狂ったフライトのリズムはそう簡単に戻ることはなかったに違いない。

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