超絶レベルの快挙。室屋義秀が
「エアレース年間王者」に至る成長曲線

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by red bull

ファイナル4で、トラックレコードを1秒以上更新する1分3秒026をマークファイナル4で、トラックレコードを1秒以上更新する1分3秒026をマーク

 苛立ち紛れの予選から完璧なフライトを見せた本選にかけての2日間、室屋にいったい何が起きていたのだろうか。年間総合優勝の決定後、公式会見、写真撮影、テレビ取材などを次々にこなし、ようやく一息ついた室屋がゆっくりと口を開く。

「昨日(予選)だけでなく、実は一昨日(公式練習)もそう(苛立っていた)で、自分がどうやって飛んでいたのか、よくわからなくなってしまったんです。今年になってサンディエゴ(第2戦)とか、ラウジッツ(第7戦)とか、ちょっと極端に言えば、『エアレースって簡単だな』って思えるようなレースもあったんですが、今回は金曜日の公式練習からすでに自分のフライトというものが全然わからなくなってしまって......。ほんのちょっと視点がズレるだけでも集中力が欠けて、あっという間にゲートに入れなくなる。そもそもエアレースのフライトというのは、それくらい繊細なものなんですが、その感覚がちょっと狂っていたんです」

 理由はともかく、一度狂った感覚は簡単には戻ってくれなかった。

「(エンジンの不調で)機体が遅かったのもあって、操縦のテンポも崩れ出してしまって......」

 室屋曰く、「年間総合優勝がかかっているからといって、自分としては緊張している感じはなかった」。だが、やはり振り返ってみると、「タイトルがかかっていることのプレッシャーがやっぱりあったんだと思います」。

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