2017.10.17

超絶レベルの快挙。室屋義秀が
「エアレース年間王者」に至る成長曲線

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by red bull

「日本でのエアショーが終わったら、他の用事は全部キャンセルして、航空券の予約も変更してこっち(アメリカ)に来ちゃった」

 少なからず重要な用件もあっただろうにと、こちらが心配するのをよそに、室屋はそう言って笑っていた。

 言葉だけを聞けば、大一番を前に少しでも準備の時間を長くしたい。そんなふうにも思える。だが、室屋の様子を見る限り、急な予定変更も"入れ込み過ぎ"が理由とは思えなかった。

「年間総合優勝がかかったレースだから(早く来た)、というのもあるけど、それよりも、日本にいるとなにかと(周囲が)騒がしいからね」

 そう語る室屋は、至って落ち着いたものだった。

「一戦一戦どれもレースは同じだけど、タイトルかかればまた面白いしね。優勝の可能性がある上位の4人はレベル的にはほとんど変わらないし、僅差のゲームになると思う。わずか0.1秒でも稼げるように、エンジンのテストもしてきたので、それが本番でどう出るか。楽しみですね」

 何より"決戦前夜"の室屋に印象的だったのは、いい意味でタイトルに固執するようなところがなかったことだ。

 目を血走らせて、周囲の人が近づきがたいオーラを発する。そんな様子は、絶対にタイトルを取ってやるという執念の表れとも言えるが、裏を返せば、余裕のなさにもつながりかねない。