エアレース年間王者へ。室屋義秀がギリギリ「賭けのフライト」に勝つ (4ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by red bull

 結果的に、勝負のバーティカルターンにペナルティはなかった。だが、スロー映像を確認する限り、"黒に近いグレー"というのがその印象だ。もしもペナルティを取られていても文句は言えまい。それほど際どいタイミングだった。

 室屋自身、「特に最後(2周目)のバーティカルターンは、自分でも上がっている最中に『どうかな?』とちょっと思うくらいだった」と認めるほどである。

 だが、ペナルティを恐れていれば、これほどのスーパーラップは生まれなかったこともまた事実。室屋は賭けに勝った。そう表現してもいいだろう。

「(ペナルティかどうか)際どかったけれど、その分勝ったという感じだった。50秒6くらいならマルティンも可能性があったと思うが、50秒4までは届かないだろう、と。フィニッシュした後にタイムを聞いて、『これなら勝てる』と確信した」

 室屋に続いて3番目に飛んだフワン・ベラルデは、インコレクトレベルのペナルティを犯し、53秒680で優勝争いから大きく脱落。そして最後に飛んだ宿敵ソンカもまた、50秒964にとどまり、室屋の後塵を拝した。

 ソンカにしても、これほどのスーパーラップを見せられた後では、無闇に挑みかかるのは得策ではないとの判断もあっただろう。室屋を上回ろうと無理をしてオーバーGでDNF(ゴールせず)にでもなれば、取れるはずのポイントも失ってしまう。ここは2位でもいいから、取れるポイントを確実に拾っておこうと考えたとしても不思議はない。

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