エアレース年間王者へ。室屋義秀がギリギリ「賭けのフライト」に勝つ (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by red bull

優勝を狙う室屋は、ペナルティ覚悟のフライトを見せた優勝を狙う室屋は、ペナルティ覚悟のフライトを見せた 攻めのフライトであることは、スタート直後から明らかだった。インコレクトレベル(ゲートを水平に通過しない)のペナルティを取られるのではないかというギリギリのターンの連続。滑るようにパイロンをすり抜けていく機体は、ペナルティを犯すことなくグングンとスピードに乗っていった。

 タイムは50秒451。ホールを0.4秒近くも上回るスーパーラップは、この日の全ラウンドを通じて最速タイムだった。室屋が覚悟のフライトを振り返る。

「ファイナル4はホントに目一杯のフライトで、ペナルティをもらうかどうかのギリギリだったんじゃないかと思う。ビデオはまだ見ていないけれど、相当際どく攻めたから」

 まさに無謀と紙一重。そんな強気なフライトのなかでも、とりわけ室屋がリスクを承知で突っ込んだのが、バーティカルターンだった。

 ゲートを通過した瞬間、一気に垂直に上昇するバーティカルターンは、上昇のタイミングが遅れれば、タイムロスが出てしまう一方で、早すぎればクライミング・イン・ザ・ゲート(ゲートを水平ではなく、上昇しながら通過すること)のペナルティを取られてしまう。わずかなタイミングの違いが大きな差を生み出すバーティカルターンは、勝負のカギを握る重要なポイントとなっていた。室屋が語る。

「ラウンド・オブ・8から、少しずつ詰めて(上昇するタイミングを早くして)いって、ファイナル4では、『これはどうかな』というくらいのタイミングでターンした。『えーい、行ってしまえ!』という感じだった」

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