エアレース年間王者へ。室屋義秀がギリギリ「賭けのフライト」に勝つ (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by red bull

 そして迎えた、ドイツでの第7戦(ラウジッツ)。その結果次第では年間総合優勝の可能性が消えるかもしれない土壇場の一戦で、室屋は大勝負に打って出た。

 室屋、ソンカともに、ラウンド・オブ・14、ラウンド・オブ・8を順当に勝ち上がり、優勝を決めるファイナル4にはふたりの他、マット・ホール、フワン・ベラルデの4人が残っていた。

 最初に飛んだホールのタイムは、50秒846。ホールがこの日飛んだ3ラウンドのフライトのなかでは、最速のタイムだった。

 エアレースは気象条件の変化に影響を受けやすいため、同じコースを飛んでいるからと言って、数字だけで一概にタイムの良し悪しを比較はできない。だが、ホールのタイムはこの日の全体のレース傾向から考えると、かなりの好タイムであることは確かだった。

 続く2番目に飛ぶ室屋は、フライト前にホールのタイムを聞いた。「かなり速かったので、無難に飛んで勝てるタイムではなかった」。それが率直な印象だった。

 室屋は常々、必ずしもすべてのレースで優勝を目指す必要はなく、コンスタントにファイナル4に残り、確実にポイントを重ねていくことが年間総合優勝への道だと考えている。だが、もはやそんな悠長なことは言っていられない。状況は切迫しているのだ。

「2位や3位を狙って取ったところで(年間総合優勝のためには)ダメだと思ったので、もうここは一発勝負。ペナルティ覚悟で勝ちにいこうと腹をくくった」

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