ザウバー初テストでF1の味を知った松下信治。日本人復活への第一歩 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文・撮影 text & photo by Yoneya Mineoki

 テストを終えてサーキットを後にした松下は、何度も「あぁ、疲れた」と口にした。それは充実感を伴った心地よい疲れだったのだろうが、速さを増した2017年型F1マシンの体力的負荷がすさまじかっただけでなく、気温36度という暑さ、コーナーが連続するハンガロリンクのコース特性、そして下位カテゴリーでは経験することのない1日8時間という走行セッションの長さもあった。

「疲れましたよ、1日でこんなに走ったのなんて初めてですからね。距離にして500kmですか? F2のテストでもこんなに走ることはないから。今日1日で水を6リットルも飲んだけど、一度もトイレにいってないんです。つまり、それだけ汗が出て脱水症状だったんですね。身体そのものは大丈夫だったけど、毎周プッシュしてるんで、Gも知らない間に身体にきて最後は結構きつかったです」

 松下のそばには、かつてアイルトン・セナや小林可夢偉らを支えたフィジオセラピストのヨーゼフ・レーベラーが控えていて、彼の身体面をサポートした。そのレーベラーも「彼は非常に興味深い人間だね。F1の経験が初めてだというのに、自信に満ちていて非常に成熟している」と感心していた。

 夏休みを過ごすために日本に戻ってきた松下にふたたび会うと、テストを終えた後も自身のドライビングの善し悪しを反芻(はんすう)してはイメージしているのだと言う。今、もう一度コクピットに座れば、1秒は速く走ることができる。それでタイムアタックをやらせてもらえれば......。

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