遺恨なきバトル。ドヴィツィオーゾと
マルケスの語り継がれる名勝負

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

「マルクとの最終ラップは必ず何かが起こる。最終ラップはとても難しかった。ふたつの左コーナーではかなり損をしていたので、オーバーテイクを狙うのは簡単だっただろう」(ドヴィツィオーゾ)

 その警戒感があったからか、「(内側から抜かれないように)インを閉めた結果、差が縮まってしまい、最終コーナーでチャンスを与えてしまった」。

 最終ひとつ前の9コーナーでイン側を閉めたドヴィツィオーゾは、10コーナー進入でマルケスがさらにもう一度仕掛けてくるとは思わなかったという。

「スペースがなかったので、まさか攻めてくるとは思っていなかったけど、エンジン音が聞こえていたのでイン側を開けておくことにした。閉めていれば、当てられて先にゴールされていたかもしれない。だから(マルケスよりも)コーナーを早く立ち上がることにした」

 ドヴィツィオーゾは強烈なハードブレーキングに定評のある選手だ。10コーナーの進入では、フロントがロックしそうな状態でマシンを震わせながら一気に減速した。

 クロスラインの立ち上がり勝負へと瞬時に作戦を切り替えたドヴィツィオーゾに対し、マルケスが無理矢理に近い状態でバイクをねじ込んでくる。マルケスもハードなブレーキングには強い自負を持っている。ドヴィツィオーゾよりも深く突っ込み、素早く立ち上がって先にゴールラインを通過するという狙いでマルケスが仕掛けた勝負は、もはやプライドと執念と意地の領域のものだ。

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