遺恨なきバトル。ドヴィツィオーゾと
マルケスの語り継がれる名勝負

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 歴史に残る激闘だった。第11戦・オーストリアGP最終ラップの最終コーナーで、アンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)とマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が繰り広げた攻防は、MotoGPの歴史のなかでもおそらく屈指の戦いになった。両選手が持てる技術と執念のすべてをわずか数秒に注ぎ込んだ緊密で白熱した駆け引きは、後年まで長く語り継がれることになるだろう。

ドヴィツィオーゾ(左)とマルケス(右)が壮絶なバトルを展開したドヴィツィオーゾ(左)とマルケス(右)が壮絶なバトルを展開した そのバトルの詳細をどれほど言葉を尽くして説明したところで、文字情報にはしょせん限界というものがある。このような駄文を読むよりも、読者諸兄姉にはまずは映像で彼らの息詰まる戦いを実際にご覧になって、両選手の攻防のすごみを体感することを強くお勧めする。

 以下では、彼らの戦いの一部始終をすでにご存じであることを前提として、話を進めることにする。

 レース中盤頃に6台が連なっていたトップグループは、全28周のラスト5周になると、ドヴィツィオーゾとマルケスの一騎打ちに絞り込まれていた。レッドブルリンク・サーキットは前半区間の3コーナーまで一気に急坂を登り、以降はすべて下り区間、しかも全10コーナーのうち左コーナーはコース中盤の6コーナーと7コーナーだけ(形式的には2コーナーも左コーナーだが、ほぼ直線といっていい形状)という極端なストップ&ゴータイプのレイアウトになっている。

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