ホンダが富士で逆襲。鈴木亜久里が見捨てなかったドライバーの恩返し (5ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

「8号車が目の前を通り過ぎた瞬間から、いろんなことを思い出しました......。亜久里さんには本当に感謝したいです。僕にはたくさんのチャンスをくれました。ここまで結果が出ないと普通はクビになっているけど、亜久里さんはずっと見ていてくれたので、だから何とか勝ちたいという思いがありました」

 そう語る野尻の目には、涙が溢れていた。

 一方、野尻のチームメイトとして5年ぶりにGT500クラスに復帰した29歳の小林崇志も、ここ数年はつらい時期を過ごしてきた。

 2010年の第6戦・鈴鹿1000kmでGT500の第3ドライバーとしてデビューし、初のスーパーGTでも動じることなくポールポジションを獲得すると、決勝でも優勝に貢献する走りを披露。これがきっかけとなり、小林は翌年からレギュラードライバーに昇格した。しかしその後は結果が残せず、2013年にはGT300クラスのARTAに移動。ある意味、"降格"という扱いを受けた。

 そんな失意のとき、小林に救いの手を差し延べたのが、GT300クラスで組むこととなったベテランの高木真一だったという。高木とコンビで走った経験が小林をさらに成長させることになり、GT300クラスでの4年間で計5勝という結果を残せた。

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