エアレース第5戦でまさかの大惨敗。室屋義秀の心身に何が起きたのか (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by red bull

 実は今回のレースで室屋がラウンド・オブ・14で敗れた裏には、天候悪化の影響があった。

 飛行機を用いるレッドブル・エアレースでは、レースエアポートとレーストラックとの間を移動するための空路が確保されている必要がある。万が一、それが断たれ、着陸できなくなってしまえば、いずれ燃料切れとなり墜落する恐れがあるからだ。

 そのようなリスクを避け、パイロットの安全を保証するため、仮にレーストラック上の天候は問題なくとも、レースエアポートとの間の天候が悪化して戻れなくなる可能性がある場合には、レースは中断される。あるいは、代替の着陸地が用意されることになっている。

 だが、今回のラウンド・オブ・14では、室屋がレーストラック脇でフライト順を待っている間、レースエアポートへの帰路が雲によってほとんどふさがれるという事態が起きていた。実際、室屋は上空を旋回する間、「これでは帰ることができないのではないか」と不安を抱えていた。

 結果的に、室屋はフライト後、レースエアポートにたどり着くことができた。だが、フライト直前には代替地への移動も考えなければいけないほど、切迫した状況に直面していたのは事実であり、室屋にしてみれば「命の安全を守ることが最優先であり、レースどころではなかった」のである。

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