ホンダが「どうせダメ」といわれたイギリスGPで示した0.3秒の進化 (5ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 あるエンジニアがそう語るように、本来カナダやバクーでは通常のサーキットと異なる空力パッケージが用意される。しかしマクラーレン・ホンダの場合は、シルバーストンでもバクーでも同じ仕様の前後ウイングパッケージが使用される。モナコ(第6戦)でもカナダでも同じだった。

 シルバーストンでもバクーと同じように金曜に2種類のリアウイングを試し、リアウイング前方のTウイングと呼ばれる空力付加物も有無の両仕様をトライした。結果的にバクーと同様に薄いリアウイングを装着したほうがラップタイムは速いということがわかり、土曜以降は2台ともこの仕様で予選・決勝に臨んだ。

 パワーがないから、空気抵抗を削ぐためにウイングを薄くせざるを得ない。それは揺るぎない事実だろう。

 しかし、車体の基本特性として空気抵抗が大きいため、ウイングを薄くせざるを得ない面もある。最大ダウンフォース量を追求しすぎているとも言える。ライバルチームが明確に分けているミディアムとハイの空力パッケージの境界線が、マクラーレンは曖昧なのだ。だから結果的に、ハイダウンフォースで走るはずのシルバーストンで薄いリアウイングを装着したほうが速い、というような現象が起きる。

 もちろん、有り余るパワーで空気抵抗を蹴散らすことができれば、コーナーでは豊富なダウンフォースを生かして素晴らしい速さを見せることができるだろう。パワーがもう1ステップ上がってくれば、マクラーレン・ホンダは見違えるような走りを見せ始める可能性を秘めている。

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