「真のライダー」だったニッキー・ヘイデン。
ホンダ元監督が語る人柄

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 山野によると、表裏のない性格、誰に対しても分け隔てなく接する素直で素朴な態度がヘイデンの魅力だ、と話す。

「とにかく、彼は嫌な表情を見せないです。ライダーって、ピットボックスの中と外では要所要所でいろんな顔をする場合があるんですが、でもニッキーの場合はそれがない。シャッターが下りたピットの中で、確かにマシンの状態に対してコンプレイン(不満)は言いますよ。でも、気分を害して声や態度を荒らげるような素振りは一切ないですね。皆に対して気を遣うライダーなんですよ」

 2009年からヘイデンはドゥカティの所属ライダーになったが、それでも山野はずっと身内のような感情を抱いていたという。

「奇妙に聞こえるかもしれませんが、彼がドゥカティに行ったあとでも、私にはホンダのライダーというイメージしかないんですよ。どこでどんなカテゴリーを走っていても、ニッキーは我々の仲間だとずっと思っていたし、それはこれからもそうですね。彼と仕事をした人は、どのチームや陣営であれ、きっと全員がそう考えていると思います。そういう不思議な雰囲気を持ってる人なんですよ、彼は。本人はまるで意識していないでしょうけれどもね」

(すでに気づいた方もいるだろうが、山野はヘイデンの思い出を語る際に、過去形ではなく、ほぼいつも現在形で話をしている)

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る