日本人9人目のチャレンジャー佐藤琢磨、
インディ500優勝への道のり

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

 先にアタックして結果的に予選3位となったチームメイトのアレクサンダー・ロッシのデータを見て、それ以上を狙ってリスクの高いセッティングをトライ。コントロールの難しいマシンでのアタックを、アクシデントを起こすことなく終えた。

 一方で、予選とは逆に、レースでは非常に慎重な戦いを続けた。琢磨らしからぬ、おとなしい走りとも見えた。得意のリスタートで、いつもとは違って順位を落とす場面も目立ったが、それは今年の彼が目指した戦い方だった。勝負は最後のピットストップ後。その時点で上位につけていることが絶対条件で、勝負の瞬間に最高の戦闘力を発揮できることを目指した。

 そのためにはタイヤの性能を引き出すことが大切になる。琢磨はそんな結論に達し、担当エンジニアとセッティングを細部まで詰めていった。それは走り方でも同様で、今年は目の前の順位にこだわり過ぎることがなかった。一度は17位まで順位を下げたが、焦らず1台ずつ着実にパスして、トップ集団へと戻っていく。

 2012年の悔しい経験が、今年のレースで生かされていたのは間違いない。特にゴール前のラスト20周を切ってからのバトルはすばらしかった。大方の予想通り、最後はインディ500で過去3勝の実績を持つエリオ・カストロネベスと琢磨の一騎打ちになった。

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