日本人9人目のチャレンジャー佐藤琢磨、インディ500優勝への道のり (3ページ目)

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

 しかし、トップを奪いにいったアタックは、当時すでにインディ500で2勝していたフランキッティに阻まれた。妨害ギリギリの巧みなラインどりに、接触を嫌った琢磨はスピン。琢磨はぶつけてでも勝ちにいくことをよしとしなかった。
 
 失敗を恐れないチャレンジ、2位ではなく優勝を狙いにいった結果はアクシデントに終わったが、明けて2013年からの4シーズン、琢磨がAJ・フォイト・レーシングで走ることになったのは、このときのファイターぶり、フェアな戦い方を評価されてのことだった。インディ500で4勝を挙げ、シリーズ通算勝利数67も歴代1位の伝説のドライバー、AJ・フォイトは、この時のアクシデントを見て「あれこそが本物のドライバーだ」と称え、チーム入りのきっかけとなった。

 フォイト加入初年度のロングビーチ・グランプリで琢磨は優勝。先行開発やチーム体制拡充がなかなか思うように進まない中、琢磨はエンジニアとの協力でマシンをトップレベルに仕上げ、クルーたちも持てる最高の力を発揮した。琢磨の攻めの姿勢、チームを大切にする姿勢がクルーたちのモチベーションを高めていた。

 だがインディカーはさらに競争が激化。琢磨は2勝目を記録できないまま、その後の3シーズンを過ごした。

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