バトンのレーシング魂はまだ燃えていた。熱い走りに復帰待望論も (8ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 スポーティングディレクターのエリック・ブリエもバトンの走りを賞賛した。

 「彼は完璧だった。準備は整っていたし、身体も引き締まり、速いし、しかも笑顔だ。パーフェクトだよ」

 見事な走りに、現役復帰を望む声もふたたび聞こえてきた。それでも、バトンの引退の気持ちに迷いはない。

「F1に戻ってくることはないよ。僕は自宅に帰り、ノーマルな日常に戻る。シルバーストンにはアンバサダーとして行くし、2週間後にはスーパーGTのマシンをテストするから楽しみだけどね。でも、F1をドライブすることは絶対にない」

 パワー不足の影響が出にくい市街地サーキットのモナコで、マクラーレン・ホンダは2台揃ってQ3に進み、クラッシュやペナルティがなければ6位や7位を争う力があることを証明してみせた。この2戦で投入された車体のアップデートは着実に効果を見せている。それはつまり、今後パワーユニットが進化すれば、どんなサーキットでもそのくらいの位置へ駒を進められるということを意味している。

 新たな人生、新たな幸せを見つけたバトンを引き留める権利は誰にもない。しかし、そのまま引退するにはあまりに惜しい存在であることも改めて世間に知らしめた。今はただ、今回のF1ドライブによって彼のその気持ちが揺らぐことを願うばかりだ。

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