バトンのレーシング魂はまだ燃えていた。
熱い走りに復帰待望論も

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 ホンダの長谷川祐介F1総責任者はこう説明する。

「木曜のFP-2(フリー走行2回目)が終わってから、ウチのメカニックがMGU-Hの現物を手で回してチェックをして違和感を見つけたんです。バーレーンのときのようにベアリングが焼きついているというほどではなく、回転に渋りがあるという程度のことです。非常に微妙な違いだったので、交換するかどうかは相当悩みましたが、毎分10万回転で回るものですから、少しでも問題があるとダメになってしまいますし、これまでのことを考慮して交換することに決めました」

 バトンは、自分が自己犠牲を払うべき立場にいることも十分にわかっていた。

 チームメイトのバンドーンは予選でクラッシュしながらも12番グリッドを獲得していたが、マシンの右サイドには大きなダメージを負っており、このモナコに投入した新型のフロアは壊れてしまっていた。予選後パルクフェルメ規定では、同一スペックのパーツへの交換は認められているが、スペックが違えばセッティング変更と見なされ、ピットレーンスタートを義務づけられてしまう。

 そこでバトンは、自分よりも入賞のチャンスが大きいバンドーンに自車に装着されていた新型フロアを譲り、自身は旧型フロアに交換してピットレーンスタートを受け容れたのだ。

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