バトンのレーシング魂はまだ燃えていた。熱い走りに復帰待望論も (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 特にブレーキングは攻め切れなかったと、バトン自身もはっきりと認めた。

「今まで僕がドライブしたなかで最速のマクラーレンだよ。ラップタイムを見ても、グリップレベルでもね。昨年11月の最終戦以降、レーシングカーに乗ったのは今年1月のラリークロスだけだったけど、このクルマをドライブするのは確かに最高だった。この6~7年はずっと(コーナー手前の)同じところでブレーキングをしてきたけど、今年はまったく違うんだ。かなりブレーキングを遅らせてスピードを維持したままコーナーに入っていかなければならないんだけど、まだそういう走り方ができなくて、マシンに自信を持って走るのに苦労したよ」

 しかし予選では、その感覚のズレを見事に修正し、Q3進出を果たして9番手のタイムを叩き出した。ずっとこのマシンをドライブしてきたチームメイトのストフェル・バンドーンと比べても、ほとんど遜色のない走りだった。

 惜しむらくは、木曜フリー走行後にMGU-H(※)の回転に渋りが見つかり、交換のため15グリッド降格ペナルティを受けてしまったことだろう。予選に臨む前の時点で、最後尾スタートはほぼ決まった。抜けないモナコでは、これは絶望的なことだった。

※MGU-H=Motor Generator Unit-Heatの略。排気ガスから熱エネルギーを回生する装置。

 MGU-Hは壊れていたわけではなく、そのまま決勝を走り切れる可能性もあった。しかし万が一、これが決勝で壊れてしまえばリタイアとなるだけでなく、レギュラードライバーであるアロンソの年間使用基数を消費することにもなってしまう。バトンには申し訳ないが、アロンソのためにここで今季5基目を投入してペナルティを"消化"しておくほうが得策だという結論をチームは導き出したのだ。

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