バトンのレーシング魂はまだ燃えていた。
熱い走りに復帰待望論も

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

「バーレーン(GP翌週の公式テスト)で半日ドライブするという選択肢もあったけど、まったく特性の異なる場所で走っても意味がないし、それよりもシミュレーターで何日か走るほうが効果的だろうって僕がチームに言ったんだ。身体については、自分の情熱であるトライアスロンのためにものすごくハードにトレーニングをしていたし、今まで以上に忙しかったくらいだよ」

 今年初めてグランプリの現場に姿を見せたバトンは、モナコGP開幕を前にリラックスした表情をしていた。もう17年も住んでいるモナコだからこその気安さもあったのだろうが、それよりも自身のレーシングドライバーとしての腕と勘がそう簡単に鈍ってはいないことに自信があったからだ。

 その証拠に、木曜のフリー走行ではマシンの習熟走行もなく、走り始めからセットアップ作業を開始した。

「ジェンソンはもう特に習熟走行も必要ないですから、基本的には最初からセットアップ作業をやっていましたね。最初は2台ともあまりバランスがよくなかったこともあって、そういう意味では手こずっていたところもありました。ですからジェンソン自身がどうとかではなくて、クルマの方向性を見つけるのに時間がかかったようですね」(ホンダ・中村聡チーフエンジニア)

 それでも初日はまだ、速さを増した2017年型F1マシンに戸惑いもあったという。それは久々のF1ドライブだからではなく、むしろ長くF1で走ってきたバトンだからこそ身についた感覚とのズレが理由だった。

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