0.091秒差の勝利を生んだ「町工場のGT王者」チーム土屋の準備力 (2ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

「ドライバーのときは準備をすれば、あとは集中してレースをやろうということだけ考えていました。しかしこういう立場になると、何が起きてもおかしくないということを想定して対策していくとキリがなくて、準備をすればするほど、不安しか出てこなかったです。

 予選でもドライバーを送り出すまで緊張していましたし、セッション中はずっとドキドキしていました。マシンのセッティングのことや、(アクシデントが起きて)赤旗が出たときのこと、トラフィック(アタック中に他車に引っかかってしまうこと)のことも考えていると、ずっと緊張しっぱなしでした」

 自身がドライバーとして20年以上にわたり第一線で活躍してきたからこそ、監督として、エンジニアとして何をしてあげなければならないのか――そういった細かいところでの配慮や工夫が、今回の優勝につながったのは間違いない。

 特に、「ドライバーに不安なくレースに臨んでもらいたい」という土屋監督の想いが顕著に出ていたのが、スタート前のグリッドだった。

 マシンはギアシフトに小さな不具合を抱えており、グリッド上でコンプレッサーと呼ばれる部品を緊急交換した。土屋監督も自らマシンをのぞき込んだり、タイヤを回して駆動の状況を確認するなど、鬼気迫る表情でマシンと向き合っていた。

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