ボッタスF1初優勝。最速フェラーリを
抑えきったメルセデスの組織力

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 スタートのポジショニングはドライバーの勘と反応がすべてと信じられているが、実はメルセデスAMGはこういったところまでデータ化して、ドライバーとともにさまざまな"シナリオ"を用意している。昨シーズンにスタートで度々苦労した彼らだからこそ、こうした対策をしっかりと打ってきたのだ。

 スタートダッシュが成功したもうひとつの要因として、メルセデスAMGのワークスチームだけが予選Q3のみで使う「スペシャルモード」の爆発力もある。メルセデスAMGはエンジンに大きな負荷がかかることを承知のうえで、ノッキングが多発するくらい点火時期を早めてエクストラパワーを引き出している。その効果は15〜20kW(20.1〜26.8馬力)にも及ぶとされ、ストレートが長いソチでこれをスタート時も使ったとすれば、その効果は絶大だ。

 そういう意味では、メルセデスAMGにとってスタートでフェラーリ勢をかわすことはある程度、想定の範囲内だったとも言える。

 彼らにとって最大の懸念は、その直後のペースだった。

 開幕戦オーストラリアGP、そして第3戦バーレーンGPで最速のマシンを手にしていながら勝利を逃したのは、決勝レースの序盤でタイヤの表面がオーバーヒートし、グリップが得られないという症状のせいだった。特に本来はグリップが高く速いはずの柔らかいタイヤで、その傾向が強かった。そして逆に、フェラーリはその点に優れていた。

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