突如わき出た「F1ホンダ救済」報道。本当は何が起きていたのか? (5ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 また、若手エンジニア育成ばかりがフィーチャーされがちだが、実際には量産部門も含めて経験豊富な技術者をなかば強引にF1開発部門に引き抜いたりもしている。

「レースにかける情熱が足りないのではないか」「サラリーマン的なスタンスでやっているからダメなんじゃないか」という声も世間からは聞こえてくるが、それを問うと、彼らを統括する長谷川はそれを真っ向から否定した。

「楽観的だったり、イージーな気分でやっている人間なんてひとりもいませんよ。それは間違いありません。知見が足りないとか、経験が足りないとか、それはずっとF1で何十年も飯を食っている(欧州メーカーの)人間と比べて差があることは事実かもしれません。ただ、みんな必死でやっています。(トップのメーカーに)しっかりと追いついて、自分たちだってできるんだということをキチッと示さないといけないと思っています」

 もちろん、中には「現場の厳しさや空気をわかっていない人間もいる」という声もチーム関係者からは聞こえてくる。大企業ゆえの、チャレンジ精神の欠乏や危機感の欠如もある。こうした組織に活を入れるために、これからさらなる組織強化も計画されているという。

 シーズン序盤戦のホンダは、未成熟な状態のRA617Hで戦わざるを得なかった。そして第3戦・バーレーンGPではMGU-H(※)のベアリングにトラブルが頻発し、その原因と究明されたオイル流路の改善を施した改良型をロシアGPに持ち込んできたが、それは信頼性を取り戻したに過ぎず、ICEが同じものである以上、性能が上向くようなことではない。

※MGU-H=Motor Generator Unit-Heatの略。排気ガスから熱エネルギーを回生する装置。

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